第7回「平成26年度王寺町り~べるカレッジ」を開催しました
今回は、"シリーズ3「古(いにしえ)のこころ」"の1回目を行い、『大和の観光名所―古典文学との関わりから―』をテーマに、本学人間教育学部の阿尾あすか助教が講演しました。阿尾助教は奈良女子大から京都大学大学院博士後期課程を経て本学に入職。専門は日本古典文学で、特に中世和歌文学を研究しています。
はじめに、阿尾助教は江戸時代に生活・交通環境と情報文化の発達により、"旅"が文化として発展したことを話しました。そして、当時大ブームになった名所図会について、歌枕として"名"のある"所"が名所であり、証歌(証拠となる歌)がなければ名所とは言えないと当時の人々が認識していたことなどを紹介しました。
次に、「大和名所図会」で取り上げられた名所旧跡のうち、歌枕として紅葉で知られる龍田川の場所が2説あることに触れました。古今和歌集などで詠われている龍田川、及び古書に記されている場所説明や挿絵などを順に読み解き、「今の大和川が龍田川と考えられる」と語りました。
また、「和州巡覧記」(1692年)に龍田川畔に紅葉がなかった、「新選大和往来」(1787年)に龍田神社・大社ともに紅葉の名所なのに楓(カエデ)の木があまりなかったという記述が見られることから、現実と文学上の場所にずれが生じ始めていることを確認しました。
そして、当時の人々は、そのずれを追体験して空想を広げながら楽しんでいたと続け、阿尾助教は「今は役に立つかどうかで判断しがちですが、江戸時代と今とではどちらが心が豊かなのかなと、研究しつつ感じます」と語って締めくくりました。
最後に、参加者からの熱心な質問にお答えして、希望者には古書の「大和名所図会」を見ていただきました。
次回は10月4日(土)14時~「正倉院文書・木簡からわかる古代日本語」をテーマに開催します。