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【大学院看護学研究科】WHO神戸センターの茅野龍馬先生をお招きしました(国際医療特論特別講義)

大学院看護学研究科修士課程の必修科目「国際医療特論」特別講義
-WHO神戸センターの茅野龍馬先生をお招きしました-


「国際医療特論」は,世界の健康課題を取り上げて,人々の健康に医療制度が与えている影響を考えます。今回は,WHOの取り組みが各国の保健政策にどのようにつながっているのか,COVID-19の行方は?といったテーマでWHO神戸センターの茅野龍馬先生に特別講義をお願いすることができましたので,一部ですがご紹介します。


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「国連事務総長の名前は?」とクイズから入りました。国連機関やWHOの組織に関する説明は大変わかりやすく,曖昧だった知識が整理できました。WHO神戸センターの紹介*1のあとには,国連で働くためのアドバイスまで飛び出て,院生は苦笑いでしたが,茅野先生は至って真面目に「期待しています!」と。修士号以上の学位と語学力,あとは自分をアピールできる力!だそうです。もちろん,アピールできるように自分を磨く努力は必要でしょう。

WHOの目指すゴールは「あと10億人のユニバーサルカバレッジ*2実現」「あと10億人を健康危機から救う」「あと10億人の生活の向上」の3つであること,WHOは,各国のヘルスシステムの成熟度に応じた4段階のサポート体制があることが紹介されました。また,ワクチンと予防接種のための世界同盟 (The Global Alliance for Vaccines and Immunization:GAVI),G8九州・沖縄サミット(2000)が契機で立ち上げになった世界エイズ・結核・マラリア対策基金(The Global Fund)などこれまでの感染症対策は評価されるとしながらも,グローバル化と高齢化が進む中での感染症対策は新たな局面を迎えていることが説明されました。 "No Global Health Security without Local Health Security" エボラ出血熱を事例として,地域の人々の健康および健康行動がなければその国の,さらには世界の人々の健康は成立しないということを確認しました。世界には国際保健規則(IHR)がありますが私たちは遵守できているでしょうか。健康危機管理の上で何が必要とされているのか,WHOは4つを提言しているとのことです。

 グローバルな動きとローカルな動きのリンク
 緊急時に動員できる資金と人材の確保
 IHRの遵守と途上国支援
 全ての国での保健システムの向上,UHCの達成


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COVID-19への対応も同じであると考えられます。ミレニアム開発目標(MDGs)に続く持続可能な開発目標(SDGs)とのつながりを含め,世界がひとつになって取り組まなければならないことを確認できた時間でした。

2時間を超える熱いご講義は,あっという間に感じられましたが,振り返れば内容は盛りだくさんで受講した院生たちが,それぞれに学びを整理して個々の健康生活,また家族や地域住人の健康,組織の健康な運営に活かしてもらえたらと思います。

茅野先生は,WHOの中で健康危機管理をご担当され,COVID-19や令和2年豪雨などで大変お忙しいところですが,本学大学院のため時間を割いてくださいました。心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

(大学院看護学研究科 教授 堀内美由紀)


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【院生の声:レポートより抜粋】
・看護学研究科 育成看護学専攻 吉﨑あゆみ
 WHOの役割や指針について、インターネットからの検索は前学習にてみていたが、改めて講義を聴くことで役割や研究の意義・視点について確認・理解することができました。
 特にCOVID-19やその他の感染症の拡大については、自身の生活の中でも一番のトピックスであったので特に興味深かったです。感染拡大において全世界のグローバル化が進み、他国との距離を大きく感じなくなった現代においてたくさんのメリットもある中での、デメリットのひとつであると認識することができました。感染拡大に伴う、各国の対応や感染症に関する異文化での認識の違いを理解する中で多文化との交流や支援も、必要な課題ではあるがその中で感染症を拡大させず、どのように対策・予防していくべきかを各個人、各国々でも十分に考えなければいけないと感じました。

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*1ジュネーブ本部の直下に位置づけられているWHOの研究センター
*2UHCと記される。「すべての人が,適切な健康増進,予防,治療,機能回復に関するサービスを,支払い可能な費用で受けられる」ことを意味し,すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受することを目指す。


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