人間教育
学科-
- 准教授
- オカノ サトコ 岡野 聡子
プロフィールを教えてください
- 短大卒業後、京都市の私立幼稚園に勤務しました。その際、3ヶ国語を流暢に話すカナダからきた女児を受け持ち、カナダという国に興味を持ちました。カナダを調べているうちに、「行ってみたい!」という願望が膨らみ、次の年、仕事を辞めてカナダのバンクーバーへ旅立ちました。英語の勉強をしながら、現地の幼稚園でボランティアをしたり、後ほど私の研究につながるネイバーフッドハウスでの地域活動を行ったりと充実した日々を過ごしました。帰国後、都市政策や地域福祉の分野をもっと勉強したいと思い、大学院へ。その後、大学教員となり、現在に至ります。また、国際学会において、ソーシャルキャピタルについて国際的な議論を巻き起こしたロバート・パットナム先生にもお会いすることができ、研究生活を続けていてよかったと思いました。
どんな研究をされているのですか?
- カナダのネイバーフッドハウスを事例として、多世代交流や福祉的課題をもつ人々が参加できる包摂的コミュニティ構築の方法について研究をしています。ネイバーフッドハウスとは、セツルメント運動を源流とした地縁型コミュニティであり、子どもからお年寄りまで、健康的な人から福祉的課題をもつ人まで、多様な方々が集う場所です。そこでは、日常生活をサポートする社会サービスやプログラムが提供されており、たとえば、子どもの預かり保育や教育、学童保育、ランチ提供、就労支援、シニアサービス、絵画教室、庭木の片づけ、各種レクリエーション(バスケットボール、体操教室など)の提供が行われています。なお、1つの施設内にて提供されるサービスやプログラム数は、100を超えます。それらのサービスやプログラムの利用者は地域住民ですが、利用者がボランティアとして提供者側になるという仕組みもあります。たとえば、シニアサービスを利用しているおばあちゃんが、ランチ提供のボランティアを行ったり、英会話クラブを利用している若者が、庭木の片づけのプログラムに参加をして、地域活動に参入するという仕組みなどです。日本には、町内会や自治会といった地域活動組織がありますが、近年では、そうした組織に加入しようとする人は減少し続けています。これからの社会は、みんなが気軽に集い合える場を新たにつくりだし、個人と地域のウェルビーイングを創り出す社会システムが必要だと感じています。
今の研究分野に興味を持つきっかけやエピソードを教えてください
- カナダに留学中、自宅の近くを散歩していた際、窓に「Hello」「你好」「Hola」「Magandang araw」「안녕하세요」など、多言語で「こんにちは」と書かれた文字が掲示されている家を見付けました。それが、現在、私が研究対象としているネイバーフッドハウスです。カナダは、世界で初めて多文化主義政策を国家政策として位置づけ、多様な社会的・文化的背景をもつ人々を受け入れようとしてきた国であり、人々が集う地域活動拠点も「多文化主義」の視点が導入されています。また、「ネイバーフッドハウスは、セツルメント運動を源流にしている」と先ほども述べましたが、セツルメント運動とは、学生や知識人が貧困地区に移り住み、住民と共に地域の生活向上と社会活動の推進を試みた社会事業のことです。1880年代、この活動はイギリスから始まり、瞬く間に世界中に広がりました。当時は、恵まれない人に施しを与えて救済するという慈善事業の考え方が主流でしたので、人々と共に活動を行い、教育を通して文化的な生活を皆で創り上げていこうという気風は斬新な考え方でした。セツルメント運動は「すべての人を受け入れる」という理念があり、それが100年以上経過した現代においても脈々と受け継がれていることに感銘を受け、研究をするきっかけとなりました。
担当している授業の中の1つを紹介してください
- キャリアデザイン
キャリアデザインはどんな授業ですか?
- キャリアデザインでは、①自己理解を深めること、②社会情勢への理解を深めることに焦点をあてた授業をしています。自己理解を深めることでは、ライフラインチャートやライフイベントシートといった教材を用いて、自分のこれまでの人生を振り返ってもらいます。また、エゴグラムという自分の性格の傾向を見る診断をしたり、価値観カードというゲームを通して、自分が人生の中で何を一番大切にして生きていきたいかを探ることもします。社会情勢への理解を深めることでは、学生の興味関心に応じて、毎年、さまざまな分野から外部講師の先生を大学にお招きして講義をします。これまで、LGBTQ+の当事者の方、福祉教育の最前線で活躍されている方、死生観の研究者、発達障害児支援をされている方、現職の国会議員の方などに来ていただき、教職に限らず、社会のことを幅広く学んでいます。
趣味や特技など好きな休日の過ごし方などを教えてください
- 趣味は、動物の飼育と農業です。動物の飼育では、うさぎが1匹、へびが2匹、メダカ、エビ、かえる、カブトムシ400匹ほど・・・、そして、ヤギ4頭を飼育しています。「ヤギの飼育って、大変ではないですか?」とよく尋ねられるのですが、犬のお世話よりも、ヤギのお世話のほうが簡単です。コミュニケーションも取ることができ、名前を呼ぶと来てくれます。興味のある方は、ぜひ、見に来てください。そして、休日は、奈良県生駒市高山町にて、地域の子育て世帯の皆さんと共に緑肥用ひまわりによる土壌改良の取り組みをしています。学生もヤギの飼育や農作業に来て、自分たちが育てたい野菜を畑で作っています。また、春は、ヨモギを取ってヨモギ団子をつくったり、わらびや木いちご、たけのこなどを収穫したりします。秋になると、枯れ葉を集めて、焼き芋を焼いたりと、学生と共に自然体験活動を楽しんでいます。